伊藤君子

伊藤君子、ジャズボーカリスト。香川県生まれ。82年初リーダー作品「バードランド」でジャズデビュー。以来、人気ボーカリストとなる。89年、日米同時発売の「フォロー・ミー」は米ラジオ&レコード誌のコンテンポラリージャズ部門の16位に。97年にはモントルージャズフェスティバルへ小曽根真とのデュオで出演した。
 00年発表の前作「KIMIKO」で自身、3度目となるジャズディスク大賞日本ボーカル賞を獲得。今年はアニメ界の巨匠、押井守制作の映画「イノセンス」の主題歌「フォロー・ミー」を歌い大ヒットとなった。

【4年ぶり新作がゴールドディスク】
4年ぶりに発表されたアルバム「Once You,ve Been In Love」(ビデオアーツ・ミュージック)がヒットチャートを駆け上がっている。それでというわけではないが、歩いている姿を拝見するだけで、こちらまでが気持ちがいい。最近、こんな人をさっぱり見かけなくなった。「わたしは全身が楽器。これって便利なようで不便でもある。本当に健康でいなくてはならないから、散歩がウオーミングアップのひとつです。それから、ヨガ、最近は週2回のスイミング。きっかけは吉永小百合さんのCMでした。あんな風に、わたしもクロールで格好よく泳いでみたいと思うようになり、それから、1年半。犬かきしかできなかったのに、今では4種類の泳ぎができるようになりました」 名実ともに、日本を代表するジャズボーカリストという自負がある。

ニューアルバムは、ものすごい趣向が凝らされていた。ビッグバンド、トリオ、そして初の日本語の曲。加えてスイングジャーナル誌のゴールドディスクにも輝いた。アルバムを一聴すれば、オリンピック1回分の空白も簡単に埋まってしまうだろう。「仕事があるというのは、本当にすばらしい。でも、のんびり屋というのか、毎日はダメ。集中力、気力、体力が続かない。でも、のんきに暮らしていると、そのまま引退になってしまうかもしれない。ここが難しいんですよ。わたしにとって、プロデューサーの小曽根(真)さんは、アルバムをつくるとき、欠かせない存在です。生意気に聞こえるかもしれませんが、ゴールドディスクを受賞したのも、自分の中では当然でしょう、と受け止めているんです」

【おごらず、騒がず、勉強の日々】
ジャズを歌う前は、演歌歌手。すでに廃盤になってしまったが、中原マキという芸名でレコードデビューした。ただ、観客を前にするのは、大物の前座ばかり。下積みが、かなり長かった。「歌謡曲を歌うことに、最初から本人があまり乗り気じゃない。23歳でデビューしたのに、18歳です−と言わされましたから。歌謡曲を歌うのに、嫌気がさしていたころ、ジャズをやったらいい、とアドバイスしてもらって…」ジャズに転向してからは順風満帆。ただし、おごらず、騒がず。今日でも暇をみつけてはニューヨークへ勉強に行く。「ひとことでスタンダードというけど、それを歌うにはそれなりの覚悟がいる。品格があるものを歌うのですから、発音や発声など、鉢巻きを締め直さないといけない。詞の意味だって、英語で考えるんです」


【本物ゆえの支持】
先日、ある地方でのこと。公演が終わると、ホールのPAスタッフが近づいてきた。そして笑顔を浮かべながら、伊藤にこう話して、ペコリと頭を下げたという。《おかげさまで久々にいい音楽をやりました。ありがとうございます》街中には音楽の名を借りた雑音が氾濫(はんらん)中。そんな世の中だからこそ、本物が支持されるのだ。今アルバムでは初のビッグバンドが売りだが、記者が感銘を受けたのはトリオがバックのフラジャイル。スティングの名曲に新たな光りを与えた。ボーカルはもちろんだが、ピアノの後藤浩二が実にいい。




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