増田いずみ

増田いずみ、ソプラノ歌手。1967(昭和42年)、宮崎県生まれ。国立音楽大学、同大学院修了。97年、29歳のとき文化庁オペラ在外研修員「フェローシップ」に選ばれる。オペラ歌手はイタリアなどの留学が一般的だが、ニューヨークでジュリアード音楽院教授のダニエル・フェロウ氏に師事し、声楽を学びながら、ハンター大学で演劇を学ぶ。 帰国後の00年ジャズライブが中心の六本木・スイートベイジルで、カジュアルなポップ・オペラコンサートを開き、注目を集める。03年デビューアルバム「ヒール・マイ・ハート」を発表。タイトル曲は映画「クイール」の挿入歌に。現在、コンサートツアー中。「芋焼酎が大好きなんですが、飲み過ぎると声がかれちゃうので封印中です」。

【矢沢永吉の「成りあがり」がバイブル】
型破りのソプラノ歌手が手にした人生のバイブルは、ボロボロになった矢沢永吉の自伝『成りあがり』。しかも、2冊目になる。「1冊目は、中学3年の秋、父の転勤で鎌倉から山口県へ行くとき、友達から贈られました。あの頃は、親の理想の女の子を演じて、洋服も決められたものを着てました。周りにどんなに反対されても、『きっと見返してやる』と自分を貫く永ちゃんは、ずっと心の支えです」クラシックの世界では、裕福な家庭の援助で留学し、華々しい受賞歴を勲章に凱旋デビューする音楽家が多いが、彼女の場合は違う。大学院のオペラ科を修了後、昼は経理事務や電話オペレーターの派遣社員をしながら、夜はレッスンという生活を5年間続けた。「35歳になってもダメだったら、オペラはあきらめようと思ってました」

この間、友人の付き添いで受けた劇団四季のオーディションに合格したり、イタリアのボローニャ歌劇場で新人賞を得たりもしたが、「やりたいことと、どこかが違う」と29歳のとき、文化庁に論文を提出、3年間の国費留学生に選ばれ、ニューヨークに渡る。

【感じたままに…】
名門ジュリアード音楽院の教授に師事しながら、大学では演劇を学んだ。「周りはすごい実力の人ばかり。私には伝えきれないところが、あるんじゃないか、と思いました。外国語で、金髪のカツラをかぶって、歌ばかりが注目され、歌の中から人間の感情の起伏が見えてこない…」そんな留学中、名曲に自分で詞をつけて歌う“ポップ・オペラ”に触れ、劇的に考えが変わった。「永ちゃんの言葉で、『ハートで汗をかいているか』という名言があるんです。そんな歌をうたいたいと思いました。1冊目の『成りあがり』は、ニューヨークに忘れてきちゃったけど、何をやりたいかは、見つかりました」美しい旋律に普段着で感じた気持ちを乗せて表現する。海外では、サラ・ブライトマンやフィリッパ・ジョルダーノの活躍が知られるが、日本でこの分野を切り開いてきた。宮本亜門氏演出によるバーンスタインのミュージカル「キャンディード」(01年)ではプリマドンナに大抜擢、昨年は、巨匠エンリオ・モリコーネが彼女のために書き下ろしたNHK大河ドラマ「武蔵」のテーマ曲「ロマンス」を歌った。

【留学中に“ポップ・オペラ”に触れ「何をやりたいのか見つかった」】
発売されたばかりのセカンドアルバム「レッド・スワン」(ビクター)を聴くと、やりたかったことが伝わってくる。「蝶々夫人」「カルメン」「トゥーランドット」「ドン・ジョバンニ」「白鳥の湖」…オペラ、バレエの大曲の名場面を紡いで、ラテン調、ジャズ風などさまざまなアレンジを加え独自の世界を築く。魅力は、キラキラした透明感あふれる超美声のソプラノだけではない。ときどき、顔をのぞかせるハスキーな地声が、ぐっと感情を盛り上げる。「手元にある2冊目の『成りあがり』は、家のお風呂に落としちゃって、ふやけてます。へこんでいるときは、今もページを開きます」ロック魂の歌姫だ。

★ 人生最高のパートナーも得て…
「プライベートなことですが、実は、12月29日に式を挙げるんです」お相手は文楽界のプリンスとして知られる人気太夫、豊竹咲甫大夫(さきほだゆう)さん(29)で、9月に入籍した。「浄瑠璃とオペラで共演したことがきっかけです。これから音楽的な幅も広がると思います。文楽には、日本人が忘れている所作などが全部入っている。いつか私も『四谷怪談』のような日本の古典を取り入れたオペラを作れたらいいな、と思っているんです」和洋の融合が楽しみだ。

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